羽生善治

羽生善治少年が初めて認定された級位は「15級」

八王子将棋クラブという、将棋ファンなら一度は耳にしたことのある有名な将棋道場があります。

将棋界の第一人者・羽生善治三冠が少年時代に腕を磨いた道場で、後に数人の棋士を輩出しています。

その道場の席主(経営者)である八木下征男氏が、将棋世界Special Vol.2「羽生善治」(P.93~94)にて、少年時代の羽生善治三冠について語っています。

才能の片鱗

八木下さんは、善治少年の実力を見るため試しに4級の少年と1局指させてみた。

手合いは6枚落ちのハンデ戦。

(略)

善治少年はまだ駒の動かし方を覚えた程度の初心者だったが、予想に反し、結構いい戦いをした。八木下さんはこう分析する。

「トントンの勝負をするということは勝つ味を知っている、ということ。羽生さんはまだ弱かったけど、集中力がありました。これから伸びる子どもは手つきに力がある。逆に、左手で指したり、よそ見をしたり、そういう子どもはだいたいダメですね」

普通、駒の動かし方を知っている程度では、まともな将棋にはなりません。

駒の動かし方を知っていることは「将棋を指すための前提」であって、「将棋の基本」ではないからです。

それでも、「けっこういい戦い」になったということは、やはり才能に恵まれていたということです。

羽生善治少年の幸運

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(画像:竜王戦中継ブログより)

その対局が終わった後、八木下さんは善治少年になんと15級の級位を言い渡します。

普通はこんな低い級位はありませんが、そこには八木下氏のある意図がありました。

その日、善治少年は八木下さんから実力認定を受けた。

15級!本来、一番下でも7級で15級などという級位は存在しない。

そこには八木下さんなりの親心があった。

「7級から始めて負けてばかりより、15級でも1つずつ上がっていった方が励みになると思ったから。実際、負けてばかりで嫌になって道場に来なくなる子どもは多い。羽生さんは見込があったから、あえて15級からスタートさせたんですよ」

人生は「誰と出会うか」が、いかに大事かがよく分かる話です。

「才能を見抜く目」を持ち、「こどもの心理」を理解している八木下さんに出会えたことが、羽生善治少年の何よりの幸運でした。

内藤國雄八段(当時)が谷川浩司少年の才能を見抜き、多面指しで上手く負けてあげたエピソードに通じるものがあります。

昇級する喜び

15級から14級へ・・・・・13級へ・・・・・。

本来、昇級するためには規定の成績を残さなければいけないが、八木下さんはそんな堅苦しいことはいわず、善治少年が道場に来るたびにオマケで1つずつ級を上げていた。

善治少年にはそれは励みになったようで、母親に「今日は1つ上がったよ」と、報告する微笑ましい姿もあったという。
八木下さんの狙いは当たったのだ。

道場が終わった後で迎えに来た母親に、善治少年が嬉々として昇級したことを伝える様子が目に浮かびます。

羽生三冠は、子どもに将棋を続けさせる方法を聞かれた際、「負けてあげてください」と答えます

そう答える理由は、このときの経験が元になっているのかもしれません。

-羽生善治