記録から見る将棋界

順位戦史上に残る大混戦

2017/06/23

棋界の語り部・河口俊彦八段(故人)が「順位戦史上もっとも激烈だった降級争い」という順位戦がありました。

昨期(第73期)の順位戦も4者プレーオフにもつれこむ混戦でしたが、それ以上の大混戦。

それは中原誠十六世名人の全盛期にあたる、第44期A級順位戦(1985年度)。

2016年度の順位戦が第75期なので、31期前ですね。

順位戦史上に残る大混戦

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少し時系列を説明すると、史上最年少21歳の谷川浩司名人(当時)が誕生したのが、第41期名人戦(1983年)。

翌期は谷川名人が防衛して、第43期(1985年度)で中原誠名人が復位。

その直後に始まったのが第44期A級順位戦(1985年6月~1986年3月)なので、順位1位が谷川浩司棋王なのです。

第44期A級順位戦
順位 氏名 年齢 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
1 谷川浩司棋王 23
2 森安秀光八段 36
3 森雞二九段 39
4 米長邦雄十段 42
5 勝浦修九段 39
6 桐山清澄九段 38
7 加藤一二三九段 46
8 青野照市八段 38
9 有吉道夫九段 50
10 二上達也九段 54
張出 大山康晴十五世 63

前期、休場していた大山康晴十五世名人(張出)が復帰したので、11名による全10局、降級者3名のルールになっています。

星だけでは分かりにくいので、赤字が6勝4敗(プレーオフ進出)、黒が5勝5敗、青字が4勝6敗(降級)。

上位と下位の成績がたった2勝差に納まったことが、大混戦を物語っています。

ありえない降級ドラマ

9回戦を終えた時点で、以下のような状況でした(以下、肩書・段位を省略)。

  • 大山(6-3) 対 谷川(4-5)
  • 加藤(6-3) 対 二上(4-5)
  • 米長(5-4) 対 青野(4-5)
  • 森安(4-5) 対 有吉(4-5)
  • 勝浦(4-5) 対 森(4-5)
  • 桐山(5-5)・・・すでに終了。挑戦・降級共に関係無し。

11名中3名に挑戦権の可能性があり、残り7名は4勝していても降級の可能性があるという状況です。

そのうちの降級争いの方を見ると、有吉対森安戦と、勝浦対森戦が、共に四勝五敗同士で、負けた方が陥落する。
ただし、森安は順位が有利なので、負けても、青野、二上が負ければ助かる。
その青野は米長、二上は加藤と、相手は挑戦権に関係がある。
谷川だって最終戦で大山に負けると危ない目もあった。
こんな大混戦は作っても出来ない。

(引用:「大山康晴の晩節 」より)

そして最初の表の通り、それぞれ最終局で負けて4勝6敗で終わった、森安八段・勝浦九段・青野八段が降級の憂き目にあいました。

普通、順位上位で4勝すれば、まず降級することはありません。

なぜなら、全9局ある内のほぼ半分勝っているからです。

が、この第44期では降級した3名が全員4勝6敗での降級と相成ったのです。

降級3名の特殊なルールだったとはいえ、順位2位で降級した森安八段は不運としか言いようがありません。

大混戦のフィナーレ

そして挑戦権争いの方も、混戦のあおりが。

6勝3敗だった加藤一二三九段、大山康晴十五世名人がともに負け、5勝4敗だった米長邦雄十段が勝ったため、6勝4敗の3者プレーオフへ突入。

そして、プレーオフを勝ち上がり、挑戦者として名乗りを上げたのは、なんと・・・!

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