三浦弘行

三浦弘行五段(当時)が羽生善治七冠の牙城を崩した地「高島屋」

2017/02/14

現在(2月13日10時38分)、4ヶ月ぶりの公式戦復帰局で羽生善治三冠と戦っている三浦弘行九段。

三浦九段がまだ22歳の若手棋士だった五段当時、羽生善治七冠から初めて棋聖位を奪取し、七冠制覇の牙城を崩した棋士として有名です。

それは1996年7月30日のことで、その歴史的対局が行われた場所が「高島屋」でした。

棋聖戦を影で支える高島屋

(画像:棋聖戦中継ブログより引用)

この「高島屋」は、昭和の時代より長らく棋聖戦の舞台になってきた由緒ある旅館。

王位戦の「中の坊」と同じく、将棋界の伝統を支えるバイプレイヤーです。

対局が行われているのは新潟市の奥座敷と呼ばれる岩室温泉にある「高志の宿・高島屋」。

泊まれる料亭、というキャッチフレーズがあり、素晴らしい料理が味わえる宿だ。

棋聖戦では昭和の時代から幾度も五番勝負の舞台となっている。

近年では第84期の第4局で羽生が挑戦者の渡辺明竜王(当時)をくだして防衛を決めた。

(引用:第86期棋聖戦第4局 棋譜:8手目コメントより)

第84期棋聖戦といえば、羽生善治三冠(王位・王座・棋聖)に渡辺明三冠(竜王・棋王・王将)が挑戦した、将棋史上初めての三冠王対決のシリーズでした。

棋王・王将を奪取直後で、昇竜の勢いだった渡辺竜王の四冠王が期待されていましたが、1勝3敗であっさり敗退。

しかもその秋には、それまで9連覇していた竜王も失冠しました。

七冠王の牙城が崩れた地

棋聖戦第4局で立会人を務めた屋敷伸之九段、副立会人の三浦弘之九段が初タイトルを獲得したのもこの「高島屋」で行われた対局でした。

立会人の屋敷九段が18歳で棋聖を獲得し、最年少タイトルホルダーになった対局場がここ「高島屋」。

副立会人の三浦八段が棋聖を奪取し、羽生七冠独占の牙城を崩したのも、「高島屋」である。

(引用:第84期棋聖戦第4局 棋譜:11手目コメントより)

屋敷九段の持つ「18歳タイトル保持者」は未だ破られていない最年少記録。

また、三浦九段が羽生七冠の一角を崩したのも、将棋史上において大きな意味を持ちます。

副立会人の三浦八段は、1996年に行われた第67期棋聖戦五番勝負第5局で羽生善治七冠に勝ち棋聖位を奪取している。

その歴史的な対局もここ高島屋で行われていた。その当時の話を三浦八段に聞いた。

「とにかく報道陣の数がすごかったですね。当時は対局に集中していたので余裕がなくあまり細かく覚えてはいないのですが、女将さんが優しい方だったことは記憶に残っています。そのあと副立会でまた来ているのですが(2004年の第75期五番勝負)、雰囲気がよく露天風呂が付いている部屋もあり、改めて素晴らしい場所だと感じました」

(引用:棋聖戦中継ブログより)

三浦九段のタイトル獲得歴は、意外にもこのときの棋聖1期のみ。

挑戦権は何度か得ているのですが、獲得には至っていません。

苦渋の成り捨て

昨年度に行われた第86期棋聖戦の決着局も、この「高島屋」がその舞台でした。

羽生善治棋聖が、豊島将之七段の挑戦を退けた第4局では、羽生棋聖の「苦渋の成り捨て」が話題になりました。

この▲6二歩成は、▲6三歩△6一金のやりとりを入れた直後に指された手。

つまり、「▲6三歩と打ったのは間違いでした」と自分から認めた意味で、泣きたくなるような辛抱の一手。

しかもこの終盤戦に、貴重な最後の一歩を無駄死にさせただけだから、余計に指し辛いのです。

しかし勝負は分からないもので、実戦では豊島七段が勝負を急いで攻め間違え、まさかの逆転負け。

相手の悪手を咎めたくなるのは、将棋指しの性なのでやむを得ません。

それよりも、暴発せずに勝負に徹した羽生棋聖の精神力を賞賛すべき。

-三浦弘行