藤井猛

藤井猛九段の妥協なき一面

藤井猛九段はその実力・実績からはもちろんですが、独特のユーモアもその人気のひとつでもあります。

「絶品チーズバーガー」「鰻屋の鰻」などなど。

ただし、かつて竜王にもなった人間がただ面白いことを言うだけのおっさんであるはずはありません。

むしろ、どこか圭角ある性格なのは当然なのです。

藤井九段のA級昇級前夜

(画像:棋王戦中継ブログより)

2000年度末、第59期B級1組順位戦最終局(2001年3月)。

その数か月前、羽生善治五冠の挑戦を退けて竜王3連覇を成し遂げた藤井竜王ですが、だからといって順位戦でも順風満帆とは限らない。

その最終局が始まる前の段階で、3人の棋士が昇級の可能性を残していました(段位・年齢は当時のもの)。

  • 三浦弘行七段(27)・・・9勝2敗(13位)
  • 郷田真隆八段(30)・・・8勝3敗(01位)
  • 藤井 猛竜王(30)・・・8勝3敗(12位)

三浦七段・郷田八段が自力(勝てば昇級)で、藤井竜王が他力(自身が勝ち、上2人が負ければ昇級)という状況です。

藤井竜王が昇級するためには、自身が勝つのは大前提として、上位2人のうちどちらかに負けてもらわないといけないのです。

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言い分を通した者が勝つ

その当日、対局開始直前に、ちょっとしたことがありました。

それは藤井九段が将棋ファンの前で見せるユニークな一面とはまた別の、ひとりの勝負師としての妥協なき一面です。

この日はB級1組順位戦五局の他に、王座戦その他の棋戦も行われていた。

そこで事務局は考え、王座戦二局を特別対局室で行い、順位戦五局を大広間にまとめた。

大広間に王座戦を入れると、早く終わるので、感想戦その他で、順位戦の対局者に迷惑がかかる、と考えたのである。

ところが藤井は、自分は特別対局室で指したい、と言った。

情勢はご存知の通りで、藤井は郷田、三浦に負けてもらわなければ昇れない。

大広間のいちばん奥で、その二人を見ながら指すのは嫌だ、というわけ。

気持ちはわかるが、事務局も困っただろう。対局前に盤の移動は大変だから。

しかし、結局藤井の言い分が通った。

うがった言い方になるが、ここで藤井の昇級は決まったのである。

藤井は気をよくしたし、郷田、三浦は、藤井の断固たる態度に気圧されるものがあったに違いない。

対局前の駆け引きは、木村・升田から、最近の加藤に至るまで、それこそ枚挙にいとまがないほどである。

言い分も人さまざまで個性があらわれて興味深く、いっぺん特集をやってみたいくらいだ。

ただはっきりしているのは、言いたいことを、はっきり言った者が勝ち、変に我慢した方が負けるのである。

(引用:藤井猛竜王(当時)「特別対局室で指したい」より)

棋士として、勝つためにベストの環境を整えるのは当然のこと。

ただし、「ベストの環境」は口を開けて待っていれば向こうから歩いてくるものではないから、自ら創り出さないといけない。

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勝負に臨む心理

「言い分を通したものが勝つ」は、河口俊彦八段の著書や観戦記を読んでいれば頻繁に出てくる自論。

言い分を通した棋士は気分良く将棋に臨め、通された方は内心面白くない気持ちを抱えながら戦うことになる。

どちらが勝負をするうえで望ましい心理状態かは一目瞭然です。

お察しの通り、最終局の結果は藤井竜王が勝ち、三浦七段・郷田九段がともに敗れて、藤井竜王と三浦七段がA級へ昇級することになりました。

-藤井猛

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