記録係不足問題

将棋連盟が講じてきた「記録係不足問題」への対策(あまり上手くいかなかった例)

前編:ここ数年間、「記録係不足問題」に悩んでいた将棋界

記録係を希望する奨励会員が減ったのは、いわば「時代の流れ」です。

時代が代われば人間の意識が変わるのも当然で、平成にはいってからは記録係を務めることの価値が減った時代だということです。

近藤六段は「現在の記録係不足は、誰が悪いわけでもない。時代に合わせて、なんとか工夫してやっていきたい」と話す。

(引用:大学進学・ネット普及… 将棋界「記録係」不足に悩むより)

しかし、誰も悪くないからといっても、何もしない限りは問題は解決しません。

そこで連盟は、これまでにいくつかの対策を講じてきました。

奨励会員以外の記録係を起用する

記録係は「何が何でも奨励会員が務めないとダメだ!」という理由はありません。

なので連盟はまず対策として、奨励会員以外の人にも記録係をやってもらうことにします。

若手棋士

将棋の棋譜を取るのがメインな仕事である以上、将棋についてある程度の知識と経験がないとできないわけで、誰にでも任せられるわけではありません。

なのでまず白羽の矢が立ったのは、つい最近まで記録係を務めていた経験のある、プロ入りして間もない若手棋士です。

先日の「奨励会制度委員会」では、四段昇段1~2年後の若手棋士に記録係を依頼する案が有力でした。

以前にも奨励会の例会日と公式戦の対局日が重なった場合、若手棋士が記録係を務めた例がありました。

奨励会幹事の話によると、記録係不足になるのは、学生の奨励会員が受験や期末試験に取り組む1~3月、順位戦の一斉対局日とのことです。

そのときに何人かの若手棋士が記録係を務めれば、何とか乗り越えられるそうです。

(引用:公式戦の記録係が不足している現状へのコメントについての見解より)

しかし、若手棋士とはいっても毎度毎度できるというわけでもなく、2度タイトル戦挑戦者になった中村太一六段や、もはや若手とはいえない上野五段まで記録係に駆り出されています。

9月11日、東京・千駄ケ谷の将棋会館4階に見慣れない光景があった。C級2組順位戦、石井健太郎四段(23)対佐藤紳哉六段(38)。

将棋盤を挟む2人の横で対局の様子を記録しているのは、2年前の王座戦で羽生善治王座(45)を土俵際まで追い詰めた気鋭の若手プロ、中村太地六段(27)だった。

(引用:大学進学・ネット普及… 将棋界「記録係」不足に悩むより)

大学将棋部員

若手棋士を動員しても足りず、大学将棋部の学生にも記録係を頼んだことがありました。

8日朝、東京・千駄ケ谷の将棋会館4階の対局室「飛燕・銀沙」で、初めて記録係を務める早稲田大2年、寺尾侑也さん(20)に、隣の記録係を務める奨励会員や無事なデビューを見守る手合課職員から声が飛んだ。

公式戦対局の記録係に、今月から本格的に大学の将棋部員が起用されたのだ。当面、持ち時間各2時間程度という短時間の女流将棋が対象。

記録係はプロ棋士の卵である奨励会員が担当しているが、近年、とくに東京で慢性的な人手不足に陥っていた。

(引用:記録係不足…大学部員を起用より)

棋士や奨励会員といった将棋界の内の人間だけでなく、もはや一般人にまで頼んで頭数を確保しようとしているあたりに、記録係の不足が深刻だったことが垣間見えます。

引退棋士や元研修会員

さらに珍しい例では、引退棋士や元研修会員という、すでに別の職業に就いている人にまでその役目が回っていたこともあります。

将棋世界 2014年6月号「盤上盤外 一手友情」には、引退棋士の植山悦行七段(2013年6月28日付で引退)と、元研修会員の平井奈穂子さんが記録係を務めたことが取り上げられています。

植山は昨年、33年間に渡る現役棋士に終止符が打たれた。引退後は生活のために将棋以外の仕事に就いたが、将棋関連の仕事をできれば増やしたかった。そこで記録係が不足している実情もあって、自ら記録係を志願したという。

(略)

本局の記録係を務めたのは、研修会に昨年9月まで所属して女流棋士を目指していた平井奈穂子さん。現在は将棋以外の仕事に就いているが、記録係が不足していることからたまに務める。

(引用:将棋世界 2014年6月号 P128, P130より)

あまり上手くいかなかった

上記のように、一般人にまで頼んで記録係の不足を補おうとしていた連盟ですが、この方法はあまり上手くいかなかったようです。

公式戦の記録係が不足する状況が数年前から続いている。

(略)

将棋連盟は臨時の対策として、若手棋士や女流棋士に記録係を依頼している。元奨励会員や記録係の講習を受けた大学将棋部の学生に依頼したこともあった。しかし根本的な解決に至らなかった。

(引用:将棋世界 2016年8月号 P.121~122より)

この方法がうまく行かなかったことで、タブレット端末による記録方法を導入していくことになります。

つづく(投稿時期は未定)

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