「棋士は記憶力がいい」イメージは幻想
『将棋の渡辺くん』では、渡辺明竜王のプライベート以外にも、棋士や将棋界についての知られざる情報もネタになっています。
上の画像は『将棋の渡辺くん』第1巻36ページより。
「棋士は記憶力がいい」は、将棋を知らない人が抱きがちなイメージの典型例。
そういうイメージを抱くのは、上の渡辺竜王みたいに何も見ずに過去の将棋の棋譜をペラペラしゃべっているところを見るからだと思いますが・・・。
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棋士が棋譜を覚えている=職業能力
人間は自分の知らない世界については、過大評価しがちなもの。
上記の例は渡辺竜王のケースですが、先崎学九段の著書「今宵、あの頃のバーで」にもまさしくそのお話があります。
そもそも棋士とは、そんなに記憶力がいいものなのだろうか。
よく、終局後に全部の手を憶えていたり、そらで局面のはなしをできたりして、だから凄いといわれるが、これは音楽家が楽譜を憶えてたり、役者が台詞を憶えたりするのと同じ、職業からくる能力で、その世界に長く生きていれば当たり前のことである。
だいたいにしてこの論理だと、客の顔と名前を忘れないバーのマスターやスナックのオバチャンも天才ということになってしまう。
これを読んでいられる貴方も、普段は数字が出てくるだけで頭が痛くなっても、仕事がらみのことだと何故か頭にスッキリ収まったりするでしょう。それと同じです。
(引用:今宵、あの頃のバーで P.117より)
要は、はっきり言ってしまえば、ただの職業能力です。
いや、漠然とした意味で「棋士は頭がいい」のは間違いないと思います。
ですが、その頭の良さが将棋以外の分野でも発揮されるかはまた別のお話ということです。
ちなみに先崎九段は子どもの頃から記憶力が悪いらしく、奨励会時代も自分が指した将棋の棋譜を残せなかったそうです。
国民的漫画に見られる誤解
国民的漫画でも、以上の誤解に基づいたと思われるシーンがあります。
こんな芸当を「バーのマスターやスナックのオバチャン」にできるとは思えません・・・。
(画像:3月のライオン7巻より)
(画像:名探偵コナン80巻より)
おそらく羽海野チカさんも青山剛昌さんも、将棋をほとんど指したことがないのだと思います。
わかったうえであえて描写しているなら別ですが、前後の流れを読む限りはそうとは思えません。
特に3月のライオンの方は、監修が「このイメージは誤解だ!」と書いた先崎九段なのに、どうしてこうなった。