女流棋士

修業のために関東に移籍し、本当に強くなった室谷由紀女流二段

2016/10/31

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(画像:倉敷藤花戦中継ブログより引用)

第24期倉敷藤花戦挑戦者決定戦で室谷由紀女流二段が上田初美女流三段を下し、里見香奈倉敷藤花への挑戦権を獲得しました。

序盤は作戦負けになりながらも、相手の一瞬の凡手を見逃さずに咎め、終盤は強い受けで凌ぎ切りました。

いかにも強い人の指し回しで、室谷さんが女流棋士の中で今やトップクラスの実力者であることは間違いありません。

ちょっと前までは、こんなに強くなかった

室谷さんは今年度、マイナビ女子オープンに次いで2度目の女流タイトル挑戦と、ここ1年くらいの充実ぶりは目を見張るものがあります。

しかし、ほんの2年ほど前までの室谷さんは、ここまで強くはありませんでした。

5年前、同じく倉敷藤花戦で挑戦者決定戦まで勝ち上がっていますが、清水市代女流六段に完敗を喫しています。

この将棋では序盤早々に駒組みが歪んで桂馬をただでポロリと取られたように、その頃は序盤戦術はあまり上手くなく、終盤の寄せあいでもポッキリ折れるように負けることもありました。

ところが今はどうでしょう。

マイナビ女子オープンで見せたように、今では序盤も上手くなり、終盤では悪くなっても容易に腰を割らずに粘る逆転術を身につけています。

それが成績にも反映され、昨年度は33戦21勝12敗(勝率:0.6364)で女流最多対局賞に輝いています。

修業のために関東に移籍

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室谷さんの転機となったのは、おそらくこれ。

2014年4月から修業のために、それまで関西所属だった拠点を関東に移したのです。

- ここで室谷さんから重大発表があるそうです。

室谷 私、室谷由紀は(2014年)4月1日付けで関東に移籍することになりました。修業のため東京へ移り住みます。

-兄弟子の故・村山聖九段や久保利明九段も通った道ですね。室谷さんの気持ちを教えてください。

室谷 私は生まれてこの20年、ずっと大阪の実家で過ごしてきました。関西将棋会館に通うようになってからでも14年になります。周りはみんな仲良しだし、楽しい。でも、そんな環境の中で今の私は甘えてしまっていると思う。自分独りでどこまでできるか、自分を追い込んでみたいんです。それで師匠に頼んで移籍を決めました。東京に行ったら強くなれるというものでもないと思うけど、やらずに後悔はしたくない。やってみないと分からないと思うし、出来る限りのことはやりたい。一生懸命勉強したいという気持ちは持っています。

- 久保さんはその経験を生かしてタイトルを取りました。

室谷 いまの自分がタイトルを取るなんてことはいえません。本当のことを言うと、私、めっちゃ焦っているんです。さっきも言ったように、私より年下の強い子がどんどん出てきている。私も20歳になるまでにやりたいことがたくさんあったのに、まだ何も出来ていない。今しか強くなるときはないと思っています。

(引用:「将棋世界 2014年 4月号」棋士に聞く本音対談より)

2年半前の室谷さんの、並々ならぬ決意が伝わってきます。

元々関東所属だった香川愛生女流三段も大学進学を機に関西に移籍して、後に女流王将を2期獲得しました(現在は卒業の目途が立ったため、関東に戻っています)。


自分の周りの環境を変えることは、ときに人生すらを変えることにつながるのかもしれません。

いや、本当に変わるのは環境ではなく、目的のために環境を変えようと決意した自分自身。

「みんな仲良しの環境に甘えたままでいたくない」「やらずに後悔したくない」「今しか強くなるときはない」と、自分自身を追い込んだその覚悟が、将棋に反映されているのです。

-女流棋士