佐藤康光

佐藤康光九段にとって「将棋」とは、「命に近いもの」

2017/04/11

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(*)将棋の渡辺くん 第2巻

あなたにとって、「将棋」とは何ですか?

そう尋ねられれば、渡辺明竜王なら「仕事」と答えるでしょう。

将棋ファンなら「一生の趣味」と答える方が多いと思います。

佐藤康光九段にとって「将棋」とは?

ではその質問に対し、永世棋聖の有資格者であり名人在位経験もある佐藤康光九段は何と答えるでしょうか?

佐藤さんはベテランのプロ棋士になった今も、将棋に負けて家に帰ると、自分に対する不甲斐なさゆえに泣くこともあるという。

そして「将棋とは」と尋ねられれば「命に近いもの」と真顔で答える。そういう人なのである。

新潟で間近に見た佐藤さんからも、勝って泣き、負けて泣く、少年のような「純粋さ」が、ひしひしと痛いほどに伝わってきたのだった。

●引用:羽生善治と現代 だれにも見えない未来をつくる

佐藤(康)九段にとって将棋とは、「命に近いもの」だそうです。

そう言えるということは、人生に「誇り」を持って生きているということ。

自分の人生に誇りを持って生きている人が、果たしてこの社会にどれだけいるのでしょうか。

米長会長相手にも退かない

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(画像:棋王戦中継ブログより引用)

佐藤康光九段の将棋に対する誇りは、誰に対してもブレることはありません。

2007年、渡辺明竜王(当時)とコンピュータソフト「Bonanza」が対局したことがありました。

そのとき、米長邦雄会長(当時)はBonanzaと戦う棋士として、まず佐藤康光九段に打診したそうです。

当時はまだコンピュータに負けた棋士はいなかったので、「コンピュータに負けた最初の棋士」になるのは嫌だ、と考える棋士も多かったのでしょう。

しかし、その目論見は外れ、佐藤(康)九段はその打診を断ります。

私(注・米長会長)は佐藤康光棋聖(当時)に頼んでみました。

(中略)

「佐藤くん、頼みがある。コンピュータと戦ってくれるか」と打診したところ、「固く、お断りします」といってきた。

私が「そう堅いことをいうな。負けたところで恥になるわけでもない。考えてみろ。しょせん遊びやで。
機械相手に数時間遊びで指してくれれば、1000万円以上の収入になるんやで」と説得しようとしたところ、佐藤棋聖は血相を変えて、「米長先生、そこに正座してください」という。

「これはまずい」と私がいずまいを正すと、佐藤棋聖から「米長先生、プロが将棋を指すのに、”遊び”ということがありますか。

先生はそんな気持ちで将棋を指していたんですか。私は固くお断りをいたします」といわれてしまった。

そういわれては私も、「佐藤君、この話はもうなしにしよう」と答えるしかない。

そんな一幕もありました。

●引用:われ敗れたり コンピュータ棋戦のすべてを語る

米長邦雄永世棋聖は現役時代に数々の偉業を残し、この当時は日本将棋連盟会長。

大先輩であり会長でもある、自分より立場が遥か上の人間相手に、「そこに正座してください」と言ったのです。

将棋を軽く扱う発言には、たとえ将棋連盟の会長相手であろうとも、自分の信念に従って反論する。

自分よりも立場が強いものに対しても、己の信念を曲げない。

この世に人間として生まれた以上、こういう生き方をする人間で在りたい。

-佐藤康光