羽生善治 vs 渡辺明 平成を彩る両雄の15年史
2017/10/08
来月、羽生善治二冠が7年振りに、前人未到の「永世七冠」を懸けて竜王戦を戦います。
それを迎え撃つのは、通算11期の在位を誇る初代永世竜王・渡辺明竜王。
将棋史上空前絶後の大偉業がかかる勝負に、これ以上ない両雄が相見えます。
15年間に及ぶ激闘
(画像:竜王戦中継ブログより)
運命の第1局まで1ヶ月を切り、これを機に両者の激闘の軌跡を振り返ってみましょう。
両者の初手合いは、藤井聡太四段がオギャアと生まれて間もない2002年度末まで遡ります。
2002年当時、羽生二冠は32歳、渡辺竜王は18歳なので、その年齢差は約14歳。
以来、2017年の今日に至るまで、その激闘の軌跡は15年に及びます。
対戦成績はほぼ互角
今期は第25期銀河戦決勝トーナメント2回戦で相見え、その対局が通算69局目でした。
両者の対戦成績は羽生善治二冠が35勝、渡辺竜王が34勝とほぼ拮抗しています。
羽生二冠戦はこれで34-35。一時は貯金3でしたが、そこから4発で借金1になってしまいました。
竜王戦第1局が70局目で、順位戦もあるのでこの秋冬で局数は伸びますが、100番指しが達成できるかは今後の自分の活躍次第です。
(引用:渡辺明ブログより)
お互いに第一線で戦っているトップ棋士同士が、15年も戦っている割には対局数が少ない気がします。
その理由のひとつは、意外に渡辺竜王が挑戦者になることが少ない(特に名人戦ではまだ挑戦者になったことすらない)からです。
番勝負では渡辺竜王が優勢
(画像:王位戦中継ブログより)
若い方が勝つ将棋界において、14歳年下の渡辺竜王が負け越しているのは意外な感じもしますが、番勝負(タイトル戦)に限れば渡辺竜王の方がリードしています。
年度 | 期 | 棋戦 | 羽生善治 | 渡辺明 |
---|---|---|---|---|
2003 | 51 | 王座戦 | 3 | 2 |
2008 | 21 | 竜王戦 | 3 | 4 |
2010 | 23 | 竜王戦 | 2 | 4 |
2011 | 59 | 王座戦 | 0 | 3 |
2012 | 60 | 王座戦 | 3 | 2 |
2013 | 84 | 棋聖戦 | 3 | 1 |
2013 | 63 | 王将戦 | 3 | 4 |
2014 | 40 | 棋王戦 | 0 | 3 |
特に2008年の第21期竜王戦は、将棋史に永遠に語り継がれる名勝負でした。
当時の観戦記を元に竜王戦の局面から指導対局をするという企画では永世竜王を懸けた2008年の将棋を久しぶりに並べて懐かしかったです。
この七番勝負、第1局では佐藤康光九段が「右玉ルネサンス」と評した羽生さんの大局観、打ち歩詰めの第4局、そして双方1分の第7局。
そもそも永世竜王が双方に懸かるというだけでも異例なのに、内容的にも色んなことがありました。
将棋世界のプレイバックでも7局中、3局が入るのは珍しかったですし、周囲の期待が対局者をも飲み込んでそれが内容に反映された、と思っています。
ここまでの七番勝負はなかなか発生しないでしょうが、今期はどうなるでしょうか。
(引用:渡辺明ブログより)
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羽生 vs 渡辺戦の傾向としては、番勝負は渡辺竜王の方に、それ以外では羽生二冠の方に分がある傾向があります。
両雄の総決算的シリーズ
(画像:棋王戦中継ブログより)
第30期竜王戦は第1局が10月20・21日に行われ、余程のことが無い限りは、2017年のうちに決着がつきます。
おそらくこの竜王戦は、永世七冠を懸けた勝負であると同時に、両雄の総決算的な意味を持つ勝負にもなると思います。
正直、どちらが勝つか想像がつきません。
渡辺竜王が羽生二冠に負けるとは思えないけど、羽生二冠が永世七冠を達成できずに終わるとも思えない。