ネット中継将棋観戦記

羽生善治竜王、永世七冠達成後の初対局でA級3敗目を喫する

12月21日(木)、第76期A級順位戦8回戦が行われ、稲葉陽八段(3勝4敗)が羽生善治竜王(5勝2敗)を破りました。

羽生竜王にとっては、永世七冠を達成してから最初の対局でしたが、白星で飾ることができませんでした。

また、3敗目を喫したことで、名人戦挑戦権争いから一歩後退しており、かなり手痛い黒星といえます。

一方、勝利した稲葉八段はリーグ成績を指し分けに戻しています。

もし負けていれば降級の心配をしなければならないところだったので、大きな白星を掴んでいます。

横歩取り勇気流

後手の羽生竜王が珍しく2手目△3四歩と突いたことで、稲葉八段は横歩取り勇気流を採用。

そして25手目▲6五飛と回ったことで、横歩取りらしく華々しい展開へと進みます。

後手は飛車成りを受ける必要がありますが、△6四歩と反発(同飛は角交換から王手飛車で終了)し、先手は飛車を7五に逃がします。

それでも王手飛車が見えていますが、今度は飛車にひもがついているので大したことはありません。

逆に▲7七角(合い駒)と打ち返せば、むしろ後手が香取りの対処に困ります。

対照的な両対局者

おそらくこの3手(▲6五飛△6四歩▲7五飛)の応酬は、稲葉八段の研究手順です。

ちょうどこれらの手が指された頃にAbemaTVで中継を観ていましたが、まるで対照的な両対局者の姿勢が印象に残っています。

稲葉八段は背筋をピンと正して正座しているのに対し、羽生竜王は背中を丸めて小さくなっており、自信無さげな雰囲気が漂っていました。

羽生竜王が永世七冠を達成して最初の対局とあって、稲葉八段が並々ならぬ闘志と研究を携えて臨んだことが伺えました。

かたや羽生竜王は、いざ指されてみて、意外と対処に困ることに気づいて、どうしたものかと悩んでいたのではないでしょうか。

結局、羽生竜王は△4二玉と上がりましたが、稲葉八段は約70分の考慮の末、単騎の桂跳ね▲4五桂を敢行。

この手が指されてから、羽生竜王の背筋が少しだけシャキッとしました。

ただその代わりに、口に手を当てたり、髪を掻きあげたり、首を傾げたりといった、落ち着きのない動作が増えました。

角交換がなされた後、稲葉八段が▲6六角と打ち、羽生竜王が香車を守るために△2二歩とあまりやりたくはない受け方をしたので、先手の主張が通った形となりました。

強打の2枚角

さて、これ以降は観ていないので、棋譜を見ただけの感想です。

そこからしばらくゆっくりした展開になりましたが、稲葉八段の▲8八角打!が風雲急を告げる決断の一手。

以下、先手がきれいに一手勝ち、といった感じの進行で、羽生竜王特有の曲線的な粘りが利きませんでした。

先手陣は大駒の打ちこみに強い陣形なので、多少の駒損でも攻めが続くと見切った、稲葉八段の大局観が光りました。

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