羽生善治竜王がタイトル通算100期を達成する最も美しいシナリオ
2018/08/09
2017年度開始時、羽生善治竜王は棋聖・王位・王座の三冠を保持していました。
通算獲得タイトル数は97期を数え、それらのタイトルを防衛できれば、それでぴったり100期に到達...そういう状況でした。
第88期棋聖戦では、タイトル戦初登場の斎藤慎太郎七段を3勝1敗で下し、これで98期。
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気鋭の若手を特に問題にせず、このまま王位と王座も防衛するのだろう...と思いきや、ここから意外な流れへ向かいます。
まさかの王位&王座連続失冠
夏から始まった第58期王位戦では、これまたタイトル戦初登場の菅井竜也七段を相手に1勝4敗で失冠。
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菅井七段の独創的な振り飛車を前に、有効な対策を打ち出せずに敗退しました。
さらに秋には第66期王座戦で、これまでにタイトル戦ですでに2度退けている中村太地六段(当時)を相手に1勝3敗で失冠。
2004年以来、実に13年振りに一冠のみに後退し、タイトルも98期で足踏み状態でした。
永世七冠そして通算99期
(画像:棋王戦中継ブログより)
しかし、7期振りに挑戦者となった第30期竜王戦では、渡辺明竜王を4勝1敗で下して永世七冠を達成!
同時に、通算獲得タイトル数を99期に伸ばしました。
こうしてタイトル100期に王手をかけた羽生竜王ですが、これまでの流れを見ると、100期を達成する最も美しいシナリオが浮かび上がります。
それは、2018年度の開幕と同時に始まる第76期名人戦で、佐藤天彦名人から名人位を獲り返すことです(今年度のタイトル戦はすでに全て終えており、達成は来年度以降に持ち越しが確定しています)。
佐藤天彦名人から名人位を獲り返しての「タイトル100期」へ!
羽生竜王は、2016年の名人戦で佐藤天彦八段(当時)の挑戦を受け、1勝4敗で失冠しています。
渡辺明棋王と佐藤天彦名人は、お互いが10代の頃からその才能を認め合ってきた盟友同士であり、羽生世代よりも一回り以上年下の世代の中では、頭一つ抜け出た棋士の双璧です。
これまで2度にわたって永世七冠を阻止された渡辺明竜王から、9年越しの奪取に成功して永世七冠と99期。
そして佐藤天彦名人からは、2年前に明け渡した名人位を獲り返して100期到達、というのがミソで、前人未到の大記録達成の敵役として相応しい2人といえます。
第76期名人戦に出られるかは分からない
しかし、このシナリオが実現するうえでの一番の問題があります。
それは羽生竜王が、そもそもA級で優勝できるかどうか、ちょっと怪しいことです。
今期のA級順位戦は、8回戦を終え、羽生竜王は5勝3敗で現在3番手につけています。
永世七冠達成後の初対局が、稲葉陽八段とのA級8回戦だったのですが、研究にハマったような形で負けたのが痛かった。
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5勝2敗で同率首位に立つ、久保利明王将と豊島将之八段とは、1敗差がついています。
そのため、この2人に最低でも1回ずつ負けていただかないことには、挑戦者にはなれないのです。
ですが考えようによっては、これだけ不利な状況から逆転で挑戦者になって名人奪取に至れば、さらにドラマチックな偉業達成になる、ともいえます。
追記:名人復位そしてタイトル通算100期を達成できなかった羽生善治竜王