言い得て妙! 将棋棋士のキャッチフレーズ傑作選
2017/04/15
人間にはそれぞれに性格があるように、棋士が将棋を指すとその人特有の個性が指し手に表れます。
それを将棋用語で「棋風」といいます。
その特徴は千差万別で、攻め将棋だったり受け将棋だったり、さらには攻め将棋の中にも華麗な捌きを得意とする棋士や、細い攻めをスレスレのところでつなぐのが上手いなど。
色々な個性が盤上でぶつかり合うことで、日々面白い将棋が生み出されているわけです。
さらに棋士には、その人の棋風や特徴をピタリと言い表したキャッチフレーズがあり、その中でも特に有名な棋士を紹介していきます。
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神武以来の天才:加藤一二三九段
(画像:日本将棋連盟より)
言わずと知れた、将棋界の生きる伝説。
史上初の中学生棋士にして、「18歳A級・20歳名人挑戦」の記録はおそらく今後も破られません。
初挑戦から20年以上の月日を経て、それまで名人を9連覇していた中原誠十六世名人から名人を奪取し、将棋史にその名を刻みました。
なお、「神武以来の天才」は「じんむこのかたのてんさい」と読みます。
「神武以来の~」は、空前の好景気である「神武景気」にあやかった、当時の流行り文句(参考:神武景気)。
捌きのアーティスト:久保利明王将
(画像:日本将棋連盟より)
数少ない「振り飛車党」のタイトルホルダー。
華麗に駒を捌いて攻めきる棋風からその名がつきました。
華麗なさばきがクローズアップされることも多いですが、粘り強さも持ち合わせていて、「粘りのアーティスト」と呼ばれることもあります。
千駄ヶ谷の受け師:木村一基八段
(画像:日本将棋連盟より)
独特のユーモアセンスがあって、解説も的確でわかりやすいことから、人気の高い棋士の一人。
由来は、受けの力が強く、相手の攻めを受け潰して勝つことも少なくないことと、たぶんハチワンダイバーの「アキバの受け師」から。
奨励会では中々抜けられず、過去6度挑戦したタイトル戦はいずれも敗退と、高い実力の割には苦労したエピソードが意外と多い棋士。
受ける青春:中村修九段
(画像:日本将棋連盟より)
独特の受けの棋風から、「不思議流」とも称される。
中原・米長時代と羽生世代の中間の世代にあたる、いわゆる「五十五年組」の一人。
23歳の若さで全盛時代の中原誠十六世名人から王将を奪取して翌期も防衛に成功し、王将2期の実績を持つ。
長手数の美学:淡路仁茂九段
(画像:日本将棋連盟より)
久保利明九段の師匠。
幼少時代の久保少年に玉1枚から教え、「振り飛車党の二冠王」を生んだ名拍楽。
「不倒流」とも称された、長手数になるのを厭わない粘り強い棋風でA級まで昇り詰めました。
久保九段の粘り強さの源は、師匠から受け継いだのかもしれない。
反面、「反則王」としても有名なのはご愛敬。
東海の鬼:花村元司九段
(画像:wikipediaより)
真剣師から棋士になった異色の経歴を持つ昭和の名棋士。
経歴が異色なら棋風も異色で、定跡には頼らない力将棋でねじ伏せ、A級16期を誇る。
「妖刀使い」とも称された、けれんみたっぷりの将棋で、本筋に頼るひ弱な棋士たちを負かし続けた。
60歳でA級に復帰する、順位戦最年長昇級記録も持つ。
出雲のイナズマ:里見香奈女流四冠
(画像:女流王座戦中継ブログより)
誰もが認める、現代女流棋界の第一人者。
奨励会三段でもあり、史上初の女性棋士まであと一歩。
「出雲のイナズマ」は、2010年に女流名人になったあたりまで使われ、当時は序盤が不得手ながら終盤力に秀でていました。
奨励会に編入した頃に、棋風を改造して序盤・中盤・終盤隙のない将棋になったことから、現在はあまり使われていない印象。