ネット中継将棋観戦記(藤井聡太四段)

世紀の一戦! 藤井聡太七段 vs 里見香奈女流四冠 【前編】

2018/08/29

2018年8月24日(金)に行われた、第90期ヒューリック棋聖戦一次予選

藤井聡太七段にとっての女流棋士との初手合が、里見香奈女流四冠という、怖ろしいほどの巡り合わせが実現しました。

次代の将棋界を担うスーパースターと、女流棋界の第一人者。

両者は第59回三段リーグで対局もしており、結果は藤井聡太三段(当時)の勝ち。

それから約2年の月日を経て、その2人が公式戦で相見えることになったのは、人知を超えた何かが働いたに違いありません。

*本局に詰めかけた報道陣の数については、歴史的交錯! 藤井聡太七段 vs 里見香奈女流四冠にて。

両者の得意戦法が激突!

(画像:AbemaTIMESより)

先手の里見女流四冠が初手▲5六歩と突いて中飛車宣言をしたのに対し、藤井七段はいつも通りに2手目△8四歩と指し、相手の得意戦法を受けて立ちます。

本局は早指し(持ち時間1時間のチェスクロック方式)とあって、藤井七段がいつも着手前に行う水分補給はなく、また指し手もスラスラと進みました。

ただし、スラスラと進んだのは、お互いに銀を繰り出して銀対抗に構えたところまで。

以降、自然な指し手を積み重ねる里見女流四冠に対し、藤井七段の指し手が、次第に苦心の色を帯びていきます。

苦心の時間が続く藤井聡太七段

その主な理由は、藤井七段が△6二金型に構えたからです(普通は△5二金右と構える)。

角換わりを筆頭に、相居飛車ではお馴染みとなった構えですが、これを対抗型で組むのはとても珍しい構想。

△6二金型の意味は、飛車を8一に引いて構えるのが基本的な狙いですが、その他にも、5四に歩を垂らされたときに、△5二歩とヘコんで受ける手を用意しています。

ところが、従来より金が玉から一路遠い分だけ後手玉が薄くなり、読まなくてはならない手順が増え、持ち時間の差が大きくなっていきます。

AbemaTVで本局の解説を務めた井手隼平四段によれば、「後手のまとめ方が難しい」のに対し、「先手は自然な手を指している」と、後手持ちの見解を示していました。

しかし、藤井七段には「なんとかしてしまうだろうと思わせる信用がある」ともおっしゃっていました。

天王山での大捌き

どんどん持ち時間の差が開いていくなか、藤井七段は天王山を押さえてから、飛車を5筋に大転回して局面をまとめにいきます。

里見女流四冠は、片美濃から木村美濃に組み換えて桂馬も跳ね、銀を追いやる手を見せます。

次に▲4五歩で銀を追われ、5五に打った歩を取られつつ捌かれたら、何をやっていたのか分かりません。

なので藤井七段は、歩を突かれる前に△5三銀左と引き、次に△5四銀と立つ手を見せて攻めを催促します。

里見女流四冠にとって不満のない形勢

しかし催促されたとはいえ、先手がそれに乗って悪いわけではありません。

天王山で大駒と銀の総交換が行われ、互いの駒が一気に捌かれました。

そしてじっと角を6六に引いておき、先手にとってなんの不満もない形勢です。

攻め駒が捌け、角が攻防に利き、相手は歩切れ...と、振り飛車にとって悪い理屈がなく、里見女流四冠が快調に指し進めています。

世紀の一戦! 藤井聡太七段 vs 里見香奈女流四冠 【後編】へつづく

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