豊島将之二冠の誕生
次代を担う関西の両雄が激突した、第59期王位戦七番勝負。
開幕した頃には猛烈な暑さだった気候も、今やすっかり肌寒さを感じるほどになり、ついに決着。
挑戦者の豊島将之棋聖が、フルセットの末に4勝3敗で、菅井竜也王位を制しました。
よって豊島棋聖は、王位を加えて「豊島将之二冠」となりました。
昨年までは、「無冠の帝王」の異名がつきそうなくらいにタイトルとは縁がなかったのに、この春からの爆発力たるや!
全7局とも先手番が勝ったシリーズ
(画像:王位戦中継ブログより)
第59期王位戦七番勝負は、「平成生まれの棋士同士で行われた初めてのタイトル戦」でした。
それだけでなく、なんと全7局とも先手番を持った方が勝った、極めて珍しいシリーズでもありました。
開幕戦で後手番だった豊島棋聖にとっては、常に黒星が先行する、嫌な展開でした。
しかし、苦しい形勢が長く続いていた第6局で、起死回生の妙手で逆転勝ちしたのが、両雄の運命を分かちました。
第7局では、豊島棋聖が少しのリードを保ったまま勝ち切る、強い人でなければできない勝ち方でした。
豊島二冠、一歩抜け出す!
菅井王位が無冠になり、豊島棋聖が二冠王になったことで、それまで八大タイトルを八人で分け合っていた中、一歩抜け出しています。
関連記事:将棋界が群雄割拠になったのも、約31年間そうならなかったのも、その主な理由は羽生善治竜王
そもそもこの群雄割拠状態は、豊島八段が(羽生善治竜王から)棋聖を獲得したことで生じたものでしたが、それを終わらせたのも豊島二冠。
そして、来月号の将棋世界の特集で、「この戦国時代を抜け出すのは誰だ?」というテーマの座談会があるのですが、それが発売される前に終わらせてしまう。
...これはもう、ちょっとカッコ良過ぎますね。
三冠、そして四冠への挑戦
豊島二冠の今年の秋から冬にかけては、三冠王、そして四冠王への挑戦といっても過言ではありません。
今期はまだ、昨年苦杯を喫した王将戦と名人戦で、挑戦権を得られる可能性があります。
将棋世界2018年10月号の座談会(P.37)の中では、「豊島棋聖が三冠王になるのは難しいかもしれない」と言われています。
しかし、棋士の目から見ればそうなのかもしれませんが、素人目からはとてもそうは思えません。
王将リーグはまだ開幕前なのでなんとも言えませんが、A級では今年も3連勝スタートを決めており、超有力な挑戦者候補といって間違いありません。
三冠王になった棋士はたった8人しかいない
将棋史上、三冠王以上になったことのある棋士はたった8人しか存在しません。
三冠を達成した順に(段位及び敬称略)、升田幸三、大山康晴、中原誠、米長邦雄、谷川浩司、羽生善治、森内俊之、渡辺明(日本将棋連盟より)。
いずれも、将棋史に名を残す偉大な棋士ばかりです。
その9人目の棋士として、豊島二冠は将棋史にその名を刻めるのでしょうか。
現在進行中の王座戦、もうすぐ開幕する竜王戦の番勝負の影で、若き天才の戦いの日々は続く。