谷川浩司

失速する光速流

2018/10/01

将棋史上最年少の21歳で名人になり、十七世名人有資格者でもある大天才棋士・谷川浩司九段。

かつては毎年のように対局数が60局を超え、勝率も7割を超えることはザラでした。

しかし、それも今や昔。

最盛期には四冠王にもなり、その後は七冠制覇に挑む羽生善治竜王と激闘を演じた棋界のプリンスも、現在の成績は芳しくなくなっています。

谷川浩司九段、かく語りき

(画像:王位戦中継ブログより引用)

数々の輝かしい実績を残し、2014年秋に紫綬褒章を受賞した谷川九段

その受賞を祝う会で、谷川九段はこのように語りました。

祝福を受けた谷川九段は感無量の表情で、「このところ、棋士としてはみなさんに顔向けできない成績しか残せていませんが、50代になっても存在感を示すことはできるはず。これからも10代、20代の若い後輩らと盤上で濃密な会話を交わせるよう精進していきたい」と話し、会場から大きな拍手を浴びた。

(引用:「50代の存在感示したい」 谷川九段の紫綬褒章祝う会より)

谷川九段ほどの棋士なら、50代になっても存在感を示すことはできるはずです。

しかし残念ながら、50代になってからの谷川九段が、存在感を示したような活躍はできていません。

「顔向けできない成績」とはいかほど?

本人自ら「顔向けできない成績」と認める、過去6期(2010~2015年度)の谷川浩司九段の年度成績を見てみましょう。

年度 年齢 対局数 勝数 負数 勝率
2010 48 29 11 18 0.3793
2011 49 27 10 17 0.3704
2012 50 26 11 15 0.4231
2013 51 36 14 22 0.3889
2014 52 32 12 20 0.3750
2015 53 28 11 17 0.3929

ものの見事に、対局数も勝率も、全盛期の半分程度しかありません。

谷川九段が最後にタイトル戦に出たのは第64期名人戦(2006年度)のことで、今からもう10年も前の話。

A級陥落後

40代半ばを過ぎてタイトル戦からは遠ざかっても、しばらくの間はA級には留まっていました。

しかし第72期A級順位戦(2013年度)で2勝7敗に終わり、32期連続で在籍したA級(名人在籍含む)から陥落します。

永世名人有資格者であることから去就が注目されましたが、B級1組に在籍して指し続けることを決意します。

ところがA級復帰を期した翌期、B級1組で迎えた第73期順位戦(2014年度)は4勝8敗で降級を争うする始末でした(最終的には残留)。

そのまた翌年の第74期(2015年度)では6勝6敗と少し盛り返しましたが、谷川九段ほどの棋士がB級1組に甘んじる姿など、誰も見たくはないのです。

2016年度の谷川浩司九段

2016年度も、かつてのような勢いを取り戻すことは出来ずに終わりました。

年度 年齢 対局数 勝数 負数 勝率
2016 54 30 12 18 0.4000

いかに大天才棋士といえども50歳をにもなれば、棋力が衰えるのは避けられない運命。

かつて谷川九段と覇を競った中原誠十六世名人・米長邦雄永世棋聖も、最後にタイトル戦に登場したのはそれぞれ47歳、50歳のとき。

A級からも50歳代前半で陥落し、以降は全盛時のような活躍をすることはありませんでした。

それを考えれば、現在の谷川九段の低迷する成績も、自然なことといえます。

-谷川浩司