将棋界のある意味で歪(イビツ)な引退制度
2017/07/05
サラリーマンや公務員に定年退職があるように、将棋棋士にもいつかは引退のときが訪れます。
具体的に、将棋棋士が引退する理由としては以下の通りです。
棋士が引退した理由には、
①自分の意思で引退
②降級や年齢規定で引退
③病気や身体面で引退
④死亡で引退、などがあります。(略)
しかし現実は、C級2組を降級後にフリークラスに在籍し、年数や年齢で50代あたりで引退する棋士が多いです。
(引用:田丸昇のと金横歩きより)
つまり②が多いわけです。
囲碁界では本人が望む限り現役を続けられるようですが、将棋界では勝てなくなった棋士は、遅かれ早かれ引退へと追い込まれます。
棋士の引退=勝てなくなること
将棋界の詳しい引退制度は、日本将棋連盟のWebサイトを見ていただくとして、ここではざっくり話を進めます。
早い話、順位戦での成績が奮わなかったら「フリークラス」という身分に陥落し、順位戦を指せなくなります。
そのまま10年以内に規定の成績に達しなかったら、そのまま引退させられます。
ではどうすれば順位戦に復帰できる(=引退を免れる)かというと、これまた早い話が「他の棋戦には出れるから、そこでたくさん勝ってね」という制度。
つまり、「勝てなくてフリークラスに落ちたのに、別の棋戦でたくさん勝たないと引退」という、弱い棋士にとっては、とんでもなく高いハードルとなっております。
引退がかかった棋戦は順位戦のみ
しかし、この制度はよくよく考えればある意味、歪んでいます。
順位戦の成績によって進退が左右されるということは、順位戦でC級2組に在籍出来てさえすれば、現役を続けられるということです。
だから理屈の上では、「C級2組から降級しなければ、その他の棋戦で1勝たりとも出来なくても引退させられることはない」ということです。
C級2組では例年、10戦中4勝すれば降級点(成績下位9名)はつきませんし、順位がよければ3勝でもセーフ。
順位戦にさえ在籍していれば、その他の棋戦が全敗でも棋士として続けられ、かたや、フリークラスに陥落してしまえば、その他の棋戦で5割勝てたとしても、最長10年で引退に追い込まれる。
棋士の出処進退が、数ある棋戦のうちの1つでしかない順位戦のみに依存しているという意味で、歪な制度となっております。
制度上は歪でも、実際は・・・
全棋戦の総合成績から鑑みるのが妥当ではないのかと思うのですが、そうではない理由は将棋界の歴史が関係していると思われます。
将棋界の棋戦は、元々は名人戦とその予選である順位戦しか棋戦がありませんでした。
それから順次、主に新聞社がスポンサーとなって棋戦が追加されていきました。
そういう歴史があるから、現行の制度に出来上がった、という面が多分にあります。
ただし、歪なのはあくまで「制度上」の話です。
順位戦で勝てない棋士は、その他の棋戦でもロクに勝てないと相場は決まっているので、あまり問題にはなりません。
2010年になって、引退規定に該当しても所定の実績を挙げれば、その棋戦に限り現役を続行できる規定が追加されましたが、7年経ってもその規定が適用された棋士はいません。
制度が変でも、現実に困ることが無ければ制度は変わりません。