「兄は頭が悪いので東大に行った」にまつわる2つの誤解
2017/07/05
「兄達は頭が悪いから東大へ行った、私は頭がいいから将棋指しになった」
これは米長邦雄永世棋聖の有名な名言なのですが、どうやら谷川浩司九段が言った言葉だと思っている人がいるらしいのです。
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谷川九段はこういうキャラじゃない
兄の方はその後、アマの日本一になり、社会人として将棋の活動も続けた。
大学は東大に入ったことから、世間で有名になっている「兄は頭が悪いので東大に行った」という言葉を、谷川の言ったことだと信じている人も出てきたが、これは米長邦雄の言葉で、浩司君はこういう刺激的な表現は好まない。
『引用:将棋世界Special「谷川浩司」(P.38)より』
将棋に詳しい人なら、谷川九段がこんなことを言うわけがないと分かりそうなもの。
ですが、詳しくない人にとっては将棋棋士は誰でも同じに見えるらしいです。
谷川浩司九段の兄・谷川俊昭氏はアマチュア強豪として活躍し、後に米長兄と同様に東大へ進学しました。
だからこの誤解が生まれたのでしょう。
衝撃の真実
・・・と、ここまでしれっと書いておいて、衝撃の真実をお教えします。
実はこの有名な名言、米長邦雄永世棋聖が言った言葉ではないらしいのです!
「兄達は頭が悪いから東大へ行った。自分は頭が良いから将棋指しになった」と故・米長邦雄永世棋聖が言ったとされていることが多いが、Wikipediaの故・米長邦雄永世棋聖の項には次のように書かれている。
この発言は、元々は芹沢博文による(米長がこう言ったという)冗談であり、本人はこのような発言をしていないという。しかし、あながち間違っていないと思い、積極的に訂正しなかったともしている(読売新聞・「時代の証言者」による)。ちなみにこれには続きがあり、その兄によれば「馬鹿でなければあんな奴の兄は務まらない」。
この読売新聞「時代の証言者」は、米長邦雄永世棋聖が語り西條耕一記者が執筆したもので、2008年1月~2月に20回にわたり掲載されたという。
「兄達は頭が悪いから東大へ行った。自分は頭が良いから将棋指しになった」については、私も「米長永世棋聖はそんなこと言っていない。いつからそのようになってしまったのだろう」と昔から思っていた。
芹沢博文九段は中原誠十六世名人の兄弟子であり、かつては名人候補と期待された俊秀でした。
若い頃はその期待に応え、24歳でA級棋士になったほどですが、26歳で不運が重なって降級し、以後名人どころかA級に返り咲くことも出来ずに51歳の若さで亡くなりました。
芹沢九段は40代頃は文筆業やタレント活動で名を馳せ、つまりは米長永世棋聖とはさぞかし性格が合ったことだと思います。
似た者同士だからこそ、絶妙に言いそうなことをユーモアたっぷりに言えたのだと思います。