藤井聡太四段の「望外」という言葉は、将棋界ではよく使われる謙遜ワード
2018/11/25
藤井聡太四段は20連勝した際のインタビューで「僥倖」という言葉を使っていましたが、今年4月にプロデビュー以来の連勝記録を更新(11連勝)したときには「望外」と表現していました。
11連勝の新記録を樹立した際の「望外」という言葉が話題になりました。やはり今も望外という気持ち?
「・・・・そうですね。当然、自分の実力以上の結果が出ているというのが実感です」
(引用:将棋世界 2017年7月号
P.25より)
「望外」=将棋界で謙遜する際の常套句
中学生が「望外」という言葉を使うのを見て、ワイドショーなんかでは盛んに取り上げられていましたが、ぼくは別に不思議だとは思いませんでした。
なぜなら、「望外」という言葉は、将棋界では観戦記やインタビューでよく見かける言葉だからです。
これで十一連勝。デビューからの連勝記録は、棋士人生において一度しかチャレンジできない。 そこでもまた、記録を塗り替えるとは、なんということか。
新四段の対局としては、異例の数の報道陣に囲まれる中、藤井はこう答えた。
「自分の実力からすると望外です」
「望外」とは、望んでいた以上のことが起きる、という意味だ。将棋界で、謙遜する際によく使われる常套句である。とはいえ、中学三年生になったばかりの少年が使えば、そこには初々しさがにじみ出る。
「望外」の使用例
その常套句が実際に使われている例がこちら。
これは永瀬拓矢六段が、C級1組に昇級した際の昇段の記の一部。
最終戦を迎えたとき、まだ昇級のチャンスが残っていたことは望外だった。
いろいろなことを思い考え尽くしたあとに、「もう昇級してもしなくてもどちらでもよい」。なぜかそういう心境になった。
(引用:将棋世界 2016年5月号
P.119より)
この永瀬六段だって当時23歳の若者ですから、将棋界に長年いる人間なら年齢に関わらず、誰だって使いうる言葉なのです。
藤井四段の本棚には将棋の本がいっぱい
さて、将棋世界2017年1月号で掲載した「ドキュメント藤井四段 ―史上最年少棋士はいかにして生まれたかー」(鈴木宏彦著)の取材でご自宅に伺った際、藤井四段の将棋本棚を見せていただきました。
5歳で将棋を覚え、14歳でプロ棋士になるまでの知識のすべてがここにありました。
残念ながら誌面では詳しく紹介できませんでしたが、藤井四段の許可を得て、ここに全蔵書リストを公開いたします。
(引用:藤井聡太四段の本棚 ―天才棋士は何を読んできたか!?―より)
藤井四段の本棚には、将棋世界や実戦集がぎっしりと収納されています。
長年それらの本を読んでいれば、おのずと「望外」という表現を何度も目にすることになります。
なので14歳の少年が使ったとしても不思議なことではなく、別にとりたてて騒ぐようなことではないのです。