記録から見る将棋界

史上4人目の「通算1000敗」を達成するのは誰だ? 最有力候補はあの人!

将棋界の、不名誉そうで実は名誉な記録に「通算1000敗」というのがあります。

「勝ってナンボの世界で、なぜ多く負けて名誉な記録なのか?」は、上の記事で読んでもらうとして、これまでの「通算1000敗」達成者は、以下の3名です。

棋士 1000敗達成年 対局数 勝数 負数
加藤一二三九段 2007年 2504 1324 1179
有吉道夫九段 2010年 2090 1088 1002
内藤國雄九段 2015年 2132 1132 1000

加藤一二三九段は1000敗どころか、前人未到の「1100敗」達成者でもあります(2017年6月18日現在)。

あと1期、順位戦に参加できていれば、空前絶後の「1200敗」すらも達成できたかもしれません。

現役棋士通算敗局数ランキング

では、史上4人目の1000敗達成に最も近い棋士は誰なのか?

普通に考えれば、今現在最も敗局数の多い棋士ということになるので、現役棋士の通算敗局数ランキングトップ3は以下の通りです。

棋士 年齢 対局数 勝数 負数
桐山清澄九段 69歳 1878 983 895
谷川浩司九段 55歳 2083 1270 810
青野照市九段 64歳 1516 754 762

*成績及び年齢は2017年6月18日現在のもの

敗局数トップ棋士の場合

現役棋士で最も敗局数が多い(=1000敗達成に近い)のは通算895敗の桐山清澄九段

今期からA級棋士になった、豊島将之八段の師匠でもあります。

(画像:棋聖戦中継ブログより)

40歳前後だった1980年代半ばに活躍し、タイトル獲得通算4期(棋聖3期と棋王1期)、A級には通算14期在籍した実績があります。

あと105敗で1000敗ということは、棋士生活をあと5年続けられれば、達成の可能性は大いにあります。

しかしその「棋士生活をあと5年も続けられるか?」が一番の問題点です。

今年で70歳ということもあり、近年はさすがに最盛期のような活躍はできず、順位戦はC2所属で降級点もひとつあります。

昨期はスレスレで2つ目の降級点を回避しましたが、もうすでに昇級どころか勝ち越しすることも難しく、引退は時間の問題といえます。

結論として、「現在1000敗に最も近い棋士」は、1000敗達成者にはなれない可能性が高そうです。

1000敗達成最有力候補はこの棋士だ!

(画像:棋聖戦中継ブログより)

ということは必然的に、1000敗達成に最も近いのは、現在敗局数2位の谷川浩司九段ということになります。

810敗だからまだ先は長いですが、まだ「55歳」だというのが素晴らしい。

将棋史上最年少の21歳で名人になり、最盛期には四冠王にもなった、かつての輝きからすれば、今の成績は物足りないのひとことです。

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が、年齢を重ねても「格」の違いは証明しており、50歳以上の棋士では唯一B級1組に所属する棋士でもあります。

年間20敗をあと10年続ければ1000敗ですから、そのとき谷川九段は65歳(実際には1年か2年はズレると思いますが)。

あと10年B級に居続けるのは無理かもしれませんが、順位戦に参加し続ける限りは、谷川九段なら余裕に達成できます。

1000敗が先か引退が先か?

ただし谷川九段は、成績及び年齢的には可能でも、別の理由で達成できないかもしれません。

その理由は、谷川九段が「十七世名人」であるからです。

将棋史に名を残す棋士は、衰えて勝てなくなったとき、潔く身を引いてきた歴史が将棋界にはあるのです。

永世名人の後輩でもある森内俊之九段も46歳の若さで、2017年度からはフリークラスに転出しました。

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谷川九段は、自身の引退の基準として、「自分が主役になる可能性がなくなったとき」だと(5年ほど前に)述べています。

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今はB1で指し続けている谷川九段ですが、それを悟ったときが、1000敗よりも先に訪れるかもしれません。

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