里見香奈三段が最後の三段リーグで昇段できなくても、それでもプロ入りする方法
2011年、当時からすでに女流棋界の第一人者だった里見香奈女流が、女流棋士としての活動とともに、奨励会1級として編入し、将棋史上初の女性棋士を目指す道を選択しました。
それから約6年の月日が経ち、その里見香奈奨励会三段も年齢制限が目前に迫り、この第62回三段リーグが原則として最後の参加ということになります。
最後のリーグ戦に望みを懸けようにも、これまでの成績も芳しくない云々...という話を、最後の三段リーグに挑む里見香奈奨励会三段という記事で書きました。
最後の三段リーグで昇段できなくてもプロ入りする方法
(画像:女流王座戦中継ブログより)
しかし、原則があれば例外があるのが世の常で、仮にこの第62回で四段昇段できなくても、まだプロになれる方法があるのです。
リーグ成績を勝ち越して終わる
三段リーグの年齢制限は前述の通り、原則として26歳までに昇段できなければ強制的に退会です。
しかしその例外として、リーグ成績が勝ち越しであれば、次回のリーグ戦にも延長して在籍し続けられる規定があります。
満23歳(※2003年度奨励会試験合格者より満21歳)の誕生日までに初段、満26歳の誕生日を含むリーグ終了までに四段になれなかった場合は退会となる。
ただし、最後にあたる三段リーグで勝ち越しすれば、次回のリーグに参加することができる。以下、同じ条件で在籍を延長できるが、満29歳のリーグ終了時で退会。
(引用:日本将棋連盟より)
だから単純に、第62回三段リーグで昇段できなくても、里見三段が勝ち越し(10勝8敗以上)さえできれば、第63回リーグ戦にも参加できます。
この規定を利用して26歳を超えても退会を回避し続け、28歳にして悲願の昇段を果たしたのが宮本広志五段です。
関連記事:宮本広志五段が乗り越えた「負けた方が奨励会退会!」の鬼勝負
ただし、この制度はあくまでも「勝ち越せばもう1回参加できる」だけで、その次に昇段できなければ意味がありません。
プロ編入試験を受ける
ですが、もし退会の憂き目に遭っても、それでもまだプロ入りの可能性は残されているのです。
その方法とは、プロ編入試験を受けることです。
プロ編入試験はアマチュアからプロ入りするための制度という印象がありますが、制度上は女流棋士も対象になっていて、日本将棋連盟の公式サイトにもハッキリ明記されています。
【公益社団法人日本将棋連盟 プロ編入試験規定】
(略)
受験資格
・現在のプロ公式戦において、最も良いところから見て10勝以上、なおかつ6割5分以上の成績を収めたアマチュア・女流棋士の希望者
・四段以上の正会員の推薦のある者
(引用:日本将棋連盟より)
関連記事:プロ編入試験はアマチュアだけでなく、女流棋士でも受けることができる
まだ道は閉ざされてはいない
奨励会を退会すれば、里見三段は里見女流五冠として、必然的に女流棋士一本の生活に戻ります。
そうなれば当然、女流トップ・オブ・トップの里見女流五冠は、棋士の公式戦に参加できるようになります。
...棋士への道が閉ざされたのに、それゆえに公式戦に参加できるようになるとは皮肉な気もするのですが、ともかく、里見三段が奨励会を退会することになったとしても、まだ棋士になれる可能性は残されているということです。
かつて瀬川さんが編入試験を受けたとき、「サラリーマンからプロ棋士へ」というキャッチコピーがありましたが、今度は「女流棋士からプロ棋士へ」が世間を賑わす日が来るかもしれません。