歴史は繰り返された...! 渡辺明棋王、33歳の受難
2018/08/07
今年6月、歴代中学生棋士たちは33歳のとき、意外にヒサンな目に遭っているという記事を書きました。
とどのつまり、簡単に言うとこういうことです。
- 加藤一二三九段→13年振りに挑戦者になった名人戦で、中原誠名人に完敗(第32期名人戦)
- 谷川浩司九段→羽生善治七冠の誕生を許す(第45期王将戦)
- 羽生善治竜王→森内俊之九段を相手に竜王・王将・名人を立て続けに失冠(第62期名人戦)
なぜ歴代中学生棋士が、見事に「33歳」という年齢で、ことごとく手痛い敗戦を経験しているのかは分かりません。
ただ、将棋世界2018年1月号の竜王戦第3局の観戦記にある、藤井猛九段による「自分が変わっていなくても周囲の変化によって成績が下がることがある」云々の話は興味深かったです。
永世七冠達成の敵役
(画像:竜王戦中継ブログより)
前述の記事を書いたときは、日本中が「藤井フィーバー」の真っ只中でした。
あの頃は、毎日のようにワイドショーで藤井聡太四段について取り上げられていました。
竜王戦が将棋界で最高額の賞金が出る棋戦ということもあり、「竜王を獲得すれば中学生で年収5000万円!」みたいな内容が花盛りだったのです。
そして羽生善治三冠(当時)もまだ、竜王戦の挑戦者になっていない時期でした。
なので渡辺明竜王にも歴史が繰り返されるとしたら、「藤井聡太四段があの勢いのまま竜王戦挑戦者になり、渡辺竜王が敗れるのでは...」みたいなことを書きました。
そして歴史は繰り返された
ところが実際は、藤井聡太四段は竜王戦で佐々木勇気五段(現六段)に敗れて敗退し、連勝も29でストップしました。
そして日本中がご存知の通り、渡辺竜王は羽生善治棋聖に竜王位を明け渡し、永世七冠を許すことになりました。
関連記事:前人未到の「永世七冠」を本当にやってのけてしまった羽生善治竜王
ものの見事に、歴代中学生棋士が33歳のときに手痛い敗戦を経験する歴史が、渡辺棋王にも繰り返されたのです。
追記:A級からも陥落
渡辺明棋王は年が明けても巻き返せず、A級からも降級が決まりました。
関連記事:在り得ないことが2つも起こった、2017年度の「将棋界の一番長い日」
名人にも、その挑戦者にもなれないどころか、まさか落ちるとは...。
個人的には、A級の6者プレーオフよりも衝撃的な結果でした。
追記2:棋王は死守!
最後に残ったタイトルである「棋王」は、フルセットの末に、防衛に成功しています。
負ければA級からも落ちた上に無冠でしたから、ギリギリのところで踏み止まりました。
これで通算タイトル獲得数は「20期」になり、米長邦雄永世棋聖を抜き、歴代単独5位になっています。
手痛く負けても、揃って立ち直りも早い中学生棋士
しかし、歴代中学生棋士たちには、33歳で手痛い敗戦を経験した以外にも、共通点があります。
加藤一二三九段は、名人戦で敗れた後、36歳で棋王を獲得し、以後10年に渡ってタイトル戦の常連になりました。まさしく「負けて強くなる」を体現している、ともいえます。
谷川浩司九段は、七冠制覇を許して無冠になった後、そのわずか1年ほどで竜王・名人を獲り返して「復活」を果たしています。
羽生善治竜王は、名人を失って王座一冠になった後、89日後に王位を奪取して複数冠に返り咲き、結局2004年度は四冠王(王位・王座・棋王・王将)で終えています。
このように歴代中学生棋士たちは、手痛い敗戦を経験しても、そのままズルズルと落ちていくのではなく、すぐに復活していることが分かります。
なので渡辺棋王も、そのうちまたバンバン勝ちまくるようになるし、いずれは名人にもなるはずです。