谷川浩司

2017年度に入ってから、復調傾向にある谷川浩司九段

2018/10/01

2013年度末、それまで32期連続で在籍したA級から落ちた谷川浩司九段。

永世名人であるがゆえにその去就が注目されましたが、B級1組で指し続けることを決意

以来、A級に復帰するわけでもなく、タイトル戦に登場するわけでもなく、棋戦優勝するわけでもなく。

ここ数年に渡って、目立った活躍はほとんどありませんでしたが、今期の谷川九段は復調傾向にあるのです。

2017年度の谷川浩司九段

(画像:谷川浩司九段が語る角換わりの歴史「他の戦型にはない美しさがある」より)

2018年2月25日現在の、谷川浩司九段の2017年度成績は以下の通りです。

年度 年齢 対局数 勝数 負数 勝率
2017 55 24 14 12 0.5384

谷川九段はかつて史上最年少の21歳で名人になり、十七世名人有資格者でもある、将棋史に名を残す大棋士です。

本来ならこの程度の成績では全く物足りないのですが、谷川九段は過去数年間、低調な成績が続いてきました。

「対局数30&勝率4割」が続いた数年間

年度 年齢 対局数 勝数 負数 勝率
2010 48 29 11 18 0.3793
2011 49 27 10 17 0.3704
2012 50 26 11 15 0.4231
2013 51 36 14 22 0.3889
2014 52 32 12 20 0.3750
2015 53 28 11 17 0.3929
2016 54 30 12 18 0.4000

谷川九段は、40代後半を迎えた2010年度からイマイチな成績が続き、以後長らく「対局数30&勝率4割」の年度成績が続きました。

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A級を維持するのも年々苦しくなっていき、2013年度末にとうとう陥落が決まり、その去就が注目されました。

2014年度からB級1組で指してはいますが、昇級争いには全く絡めず、A級に復帰する気配はありません。

タイトル争いからも遠ざかり、最後にタイトル戦に登場したのが、2006年度の名人戦ですから、もう10年以上も前の出来事です。

2017年度に入ってからは復調の気配

こういう背景があるため、5割そこそこの勝率でも復調といえるわけです。

ただ、例年よりもちょっと勝率がいいだけではなく、各棋戦でもそれなりの活躍を見せてくれています。

第76期B級1組順位戦

第76期B級1組順位戦では、5勝5敗の指し分けでした。

今期は諸々の事情と都合により、B1は総勢11名、それぞれ10局の変則ルールで、谷川九段のみが一足早く全日程を終えています(最終局が抜け番)。

5勝2敗からの3連敗で、A級でのいつぞやの失速を想起させますが、今期は全く落ちる心配のない戦いぶりでした。

特筆すべきは、今期からB級1組に昇ってきた菅井竜也王位と斎藤慎太郎七段(棋聖戦挑戦者)の両方に勝っていること。

50代以上の棋士で最上位のクラスにいる貫録を見せています。

第59期王位戦

第59期王位戦では、予選を勝ち抜き、挑戦者決定リーグ入りを決めています

リーグ入りを懸けた対局では、今期藤井聡太四段(当時)に2戦2勝の大橋貴洸四段を相手に、伝家の宝刀「光速の寄せ」を炸裂させて快勝しています。

昨日の谷川ー大橋戦、光速流発動に興奮したファンの方も多かったのではないでしょうか。

あまりに鮮やかな詰みで、感動しました。

途中は谷川先生のほうが苦しいように見えたのですが、あの形は詰みありと見切っていたのでしょうね。

読みの正確さとともに、角換わりの経験値を感じる終盤戦で、印象に残りました。

(引用:daichanの小部屋より)

リーグ入りしたことで、久々のタイトル挑戦が射程に入ったのはもちろんですが、その2回戦で羽生善治竜王との3年ぶりの対局が実現するのもうれしいところ。

将棋ブームの今、華々しい復活を!

他には第66期王座戦で、二次予選初戦で山崎隆之八段に勝ち、あとひとつで決勝トーナメント進出というところまできています。

現時点で目立った活躍はこのくらいですが、竜王戦や王将戦の予選が始まれば、さらなる活躍を見せてくれることでしょう。

思えば2017年の将棋ブームは、「中学生棋士」がその中心にいました。

藤井フィーバーに始まり、ひふみんこと加藤一二三九段がバラエティ番組で大ブレイクし、羽生善治竜王が永世七冠を達成しました。

年が明けてからも、羽生善治竜王に国民栄誉賞が授与され、藤井聡太五段(当時)が史上最年少で棋戦優勝を成し遂げました。

史上2人目の中学生棋士である谷川九段にも、いずれ華々しく復活し、将棋ブームに貢献してくれることを期待しましょう。

-谷川浩司