29連勝の1年後に、藤井聡太六段(当時)が30連勝していたかもしれない
2023/04/02
おそらく、いやほぼ間違いなく、これからの将棋界を代表する存在になっていく藤井聡太七段。
藤井四段(当時)はプロデビュー後、いきなり29連勝して日本に藤井フィーバーを巻き起こしたわけですが、その1年後に、30連勝してしまうかもと思わされるほどに勝ちまくったことがありました。
数々の記録を塗り替えていく過程で、おそらく忘れられてしまう記録があるので、ここに書き留めておきます。
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藤井聡太六段(当時)の、2017年度末の疾風怒涛
(画像:AbemaTIMESより)
14連勝までについては、すでに『藤井聡太四段(当時)の29連勝を、藤井聡太六段が塗り替えてしまうかもしれない』で書いたので割愛。
この間に、C1昇級(+五段昇段)と朝日杯優勝(+六段昇段)への昇段を果たしています。
杉本昌隆七段への恩返しを果たしてから一週間後、藤井六段は順位戦最終局を迎えます。
15連勝:C級2組で10戦全勝を決める
第76期C級2組順位戦最終局、三枚堂達也六段との、15連勝を懸けた対局。
死闘が繰り広げられ...るかと思いきや、横歩取りの先手番を持った藤井六段が快勝しました。
勝っても負けても来期の順位に影響しない、いわば全くの消化試合でしたが、10戦全勝で初参加の順位戦を終え、昇級に華を添えました。
16連勝:怪物・糸谷哲郎八段を破る
16連勝を懸けた対局の相手は、2018年度からのA級参戦を決めていた糸谷哲郎八段。
しかもその対局は、第66期王座戦二次予選決勝、つまりは決勝トーナメント進出を賭けた大一番でした。
元竜王であり、A級への昇級を決めていた強敵を相手では、さすがの藤井六段といえども容易には勝てないだろうと思った人も多いはずです。
しかし、いざ蓋を開けてみれば、またも藤井六段の完勝でした。
強敵ふたりを見事な内容で連破し、30連勝がにわかに現実味を帯びてきました。
2017年度最後の対局でついに敗れる
冷静に考えれば、まだ半分を超えたところなのですが、このときは29連勝のときと異なり、トップ棋士を何人も破っていました。
しかも内容が快勝完勝の連続でしたから、誰と戦っても負けるイメージはつかず、本当に30連勝しかねないと思わせる雰囲気は十分にありました。
そして迎えた、2017年度最後の対局。
17連勝を懸けて臨んだ藤井六段でしたが、井上慶太九段に敗れ、ついに連勝が止まりました。
プロデビュー以来、約1年半もの長きに渡って、50代以上の棋士に負けたことのなかった藤井六段でしたが、ついに黒星がつきました。
2017年度の連勝部門ワンツーフィニッシュ
こうして「30連勝」は幻に終わったわけですが、それでも16連勝したことで、それに劣らぬ怪記録が生まれます。
まず藤井六段は、2017年度の将棋大賞の記録4部門を独占しました。
さらに連勝部門は、1位が藤井聡太四段(当時)の29連勝で、2位が藤井聡太六段(当時)の16連勝という、まさかのワンツーフィニッシュでした(日本将棋連盟:2017年度棋士成績ランキングより)。
藤井七段は棋士になったときから、「事実は小説よりも奇なり」を地で行くような棋士人生を歩んでいますが、これもまたそのひとつ、というわけです。