大山康晴十五世名人が69歳で亡くなるまでA級に在籍し続けることができた理由
2016/10/13
A級とは、名人に次ぐ将棋界のトップ10。
並の棋士なら、1期でもA級に在籍すれば賛辞を浴びます。
しかし、将棋史に名を残すような天才棋士にとっては、A級から落ちることはそれだけで大事件なのです。
天才といえども、年齢による衰えは避けられない
将棋史に名を残す棋士はたいてい20歳前後からタイトルを獲り、40を過ぎるくらいまでは一流の格を維持します。
しかし、いかに天才棋士といえど、50歳を迎える頃には往時の活躍は少なくなり、衰えていきます。
例えば、1980年代に覇を競った3名の大棋士たちの、最後にA級に在籍していたときの年齢は以下の通り。
- 中原誠十六世名人・・・52歳
- 米長邦雄永世棋聖・・・54歳
- 谷川浩司九段(*)・・・51歳(*現役棋士・2016年度現在)
永世称号を持つほどの大棋士でも、この有様です。
しかし、大山康晴十五世名人は別格。
49歳の時に名人を失うも、結局69歳で亡くなるまでA級に在籍し続けました。
大山十五世名人はなぜ、棋力が衰え、ガンの手術をも乗り越えながらもA級の地位を維持できたのでしょうか。
そこにはある、意外な秘訣がありました。
「お客さん筋」で勝ち星を確保
大山のA級順位戦の星を眺めると、内藤に全く負けていない。十二連勝である。
つまり大山は、内藤のほかに、加藤(一)、二上、など堅く勝ち星を得られる、業界用語でいう、「お客さん筋」を持っていた。
そうした基礎票みたいなものがあったから、A級を維持できたのである。
(引用:大山康晴の晩節)
A級は原則として全9局なので、そのうち4勝すればまず残留できるし、順位が良ければ3勝でもなんとか助かる目もあります。
ということは、4勝のうち手堅く3勝の見込みがあるのはとてつもなく大きいことです。
さらにその勝ち星はもちろん、その他の強敵と対局する場合も、精神的なゆとりが違い、指し手にも好影響があるでしょう。
念のため、こちらのサイトを使って、50~69歳までの「お客さん筋」との具体的な成績を調べてみました。
- 対 内藤國雄九段・・・12戦12勝0敗
- 対 加藤一二三九段・・・14戦10勝4敗
- 対 二上達也九段・・・11戦8勝3敗
なるほど、これは「お客さん筋」と呼ばれるだけの戦績ですね。
ナンバー2の若手を徹底的に叩いておいたのが、功を奏したのです。